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プロローグ:毎日、恋してたのだろうか
大学生活初日の午前八時。耳元でスマホのアラームがけたたましく鳴っている。毎日夜遅くまで読書三昧の春休みを過ごしたせいか、寝不足だ。許されるなら時間ギリギリまで布団から出たくない。
何とか脳を目覚めさせようと、寝ぼけながらも枕元のスマホを手探りで掴み、画面の時計を見る。まだ出かける時間には早い。そりゃそうだ。いつもそのつもりでアラームを設定しているのだから。スマホをいじっているうちにだんだん目が覚めてきて、ちょうど時間になる、というのが理想的な朝の過ごし方だと東山大雅は思った。
スマホにはLINE通知が一件と、小説投稿サイトのピクスターからお気に入り作品の更新を知らせる通知が届いていた。
ピクスターのアイコンをタップすると、更新された作品が一番上に表示されていて、それを開くと、視界に文字の羅列が飛び込んできた。
『毎日、君に恋をする』、通称『毎君(まいきみ)』は大雅がピクスターでお気に入りに入れている作品の一つで、更新された時は通知がくるようになっている。
この作品の作者である「うえりん」のことは大雅はよく知っている。うえりんの正体は、幼馴染である上松倫太郎だ。家が近所と言うことで親同士が仲がよく、中高と同じ学校で高校時代には同じ文芸部に所属してい他事もある。
その文芸部所属中に、上松は小説を書く楽しさを覚えた。もともと小説を読むのが好きだった大雅は上松の作品を読むことに抵抗はなく、更新のたびに読むようにしている。更新頻度は、毎日ある時もあれば、週に一度の時もある。どうやら作者に書きたいネタが降りてきたときに書いているらしい。
「あいつ、また遅くまで書いてたのかよ」
昨日寝たのは午前二時を過ぎていたが、その時には通知はなかったはずだ。
毎君の登場人物は縦野と横山の二人だけで、その二人のなんでもない日常が綴られている。特に事件があるわけではなく、平穏な二人の緩やかな時間を愛でる作品といっても過言ではない。ただ、二人は最初から男性同士でありながら恋人同士である。要するに男同士の恋愛模様を書いた作品だ。毎君の読者は連載の始まった去年の夏から今まで、緩やかではあるが増えている。
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