第三章:特別ってなんだ

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「あのさ、おまえ、俺のことどう思ってるわけ?」 「えっ」  もう面倒くさくなった。なんで上松の胸中を探らないといけないのだ。どうせなら言えよ。はっきりさせてくれよ。この先、悶々と考え続けていくなんてごめんだ。 「……特別」 「さっき聞いたわ、それ」 「だから、そういうことだってば!」  上松が恥ずかしそうに顔を背ける。いや、だから言えよ。 「じゃあ、質問変える。あの小説は、どういうつもりで書いてるわけ」 「え?」 「毎君だよ! しかも横山って俺そのまんまじゃねーか」 「ち、違うよ! 何言ってんの、嫌だなぁ!」  否定しているフリのつもりなんだろうが、ごまかすのが下手過ぎる。そうなんだ。上松という男はこういうところがある。嘘がつけない。ごまかせない。素直すぎる。どれをとっても、それが上松なのだから仕方ない。 「あれは、僕の叶えたい夢なんだ。いつか、ああなれたらいいなぁって」 「ああなれたらっておまえさ……」  だから、それを聞いてるんだろ。叶えたいって何をだよ、つーか、もうほぼ言ってるじゃねーか、と大雅は思わず頭を抱える。 「ヒガシ、くん?」 「もういい。今度は俺が知恵熱出そう」 「えっ、なんで?」 「おまえがその気なら、もう俺は待つしかないだろ」 「待つって何を?」 「こっちの話」 「お、教えてよ、ヒガシくん!」  絶対に言ってやるもんか。おまえの告白待ちだなんて――  結局、そのまま上松の部屋で、今までの分を埋めるくらいに本の話をした。気づけば午後6時半を過ぎていて、慌てて真中に『申し訳ないけど、今日の飲み会欠席させて。キャンセル代は支払うから』とラインを送った。そしてすぐに『了解』とかわいらしいスタンプが返ってきた。ありがたい。当日欠席連絡なんて非常識すぎる。明日は絶対に謝らなければいけない。  しかし不思議と欠席の連絡をしたら、気持ちが軽くなった気がした。どこかで無理をしてた自分が解放されたのだろうか。真中にはちゃんと説明したほうがいいのかもしれない。  そして寝る前に毎君の小説が更新されているのを確認した。冒頭で、主人公の縦野が風邪を引いたということで横山が見舞いに尋ねていた。どこかで見たような内容だなと目を細める。しかし憤慨したのはそのあとの横山の質問だ。 『おまえ、俺のことどう思ってるわけ?』  その問いに縦野が答える。 『大好きに決まってるよ』 「だから、そう言えばいいだろ!」  部屋で一人叫んだ。ああ、こんなことが一体、いつまで続くのだろうか。
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