弥子、忘れ物を届ける

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「最初からなんでも上手くできる人なんかいないよ。それに、ほら。来られたじゃないか」 「うう」 「な?そうだ、外でお昼を食べよう。もう休憩なんだ」 ここまでの話を聞かせてよ、と旦那様は言った。 私はハンカチで涙を抑え、頑張って涙を引っ込めた。 「はい!」 会社の敷地内にある欅の木の下で、私達はお昼ご飯を食べた。 食べながら、私はここまでの冒険譚を語った。 改札で弾かれかけたが、爽やかな駅員さんが力添えをしてくれたこと。 異国の人に話しかけられたこと。 格好いい女の人が代わりに対応してくれたこと。 痴漢を妖術で退治した話には微妙な顔をしていたが、概ね笑ってくれた。 「弥子は面白いね」 そうだろうか。 迷惑をかけ通しで、罪悪感がとてつもないのですが。 それを言うと、もっとやばい人は沢山いると旦那様は疲れた顔をした。 そして、弥子はありがとうやごめんなさいがきちんと言えるから大丈夫だよ、と。 「それに、ミッションはコンプリートしたでしょ?」 旦那様はお弁当を軽く上げてみせた。 「特別アイテムもゲットしたし」 お稲荷さんを指さして。
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