その言葉を言って欲しかったの

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 ナツは26歳にしてバツイチになった。 自ら望んだのだから仕方がない。  結婚生活はわずか1年と3日。 元夫の誠は警察官だった。 警察官は、警察官でも筋金入りの警察官だったのだ。 おじい様からお父さん、お兄さんニ人も警察官で、お母さんは警察官になるには背が足りなくて警察官にはなれなかったけれど免許更新の事務をやっているような、まさに警察一家であった。 一方、ナツの家は会社員の父親と専業主婦の母親そして弟が二人というごく普通の家庭だったので、警察官の生活など全く知らなかった。 誠とは、知人の紹介で知り合った。 交際中は誠実で、正義感も強く、身体は常に鍛えていたので屈強な身体つき、何よりも昇進するためにいつも勉強をしていて心から尊敬できた。 結婚を申し込まれた時は本当に嬉しくて幸せになる予感しかなかった。 「ナツの為にも早く上に上がれるように頑張るから」 そう言ってくれた。
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