溶けない城と眠らない街

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 オルベリアに足向けできる国など大陸中探しても見つかるはずもなく、今も昔のまま他国との付き合いを続けることができている。  今世界が平穏であるのはオルベリアのおかげであることを知らないものはいない。    オルベリアを訪れた人々が口をそろえて言うには、国境を越え国に入った途端すっと背筋が伸び神聖な気持ちになるらしい。  美味しい料理、快適な宿、きれいに整備された公園とすべてが完璧で、どこをとっても美しく誰もの心を引き付けている。  一番の見どころは氷に覆われた城だが、外から祈りを捧げることが許されるだけで、決して中に入ることはできない。  王家の居城であるだけでなく大聖堂でもあるその城は、他国のそれのような派手さはないが清く美しく見ているだけで心洗われる。  小高い丘の上にその城はあり、その下には内苑、外苑と続いている。  かつての外苑は国民であれば誰でも訪ねることができるようになっていて、日々の疲れを癒すためにいつでもくつろげる空間になっていた。
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