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王家の人々もよく姿を現し、そこここに置かれたテーブルを囲んで一緒にお茶を楽しむことも珍しくなかった。
幼い姫や王子が街の子供たちと遊ぶ姿も可愛らしく、王や王妃は目を細めて微笑みながら見守っていた。
国民にとって王家の人々は遠い存在ではなく、いつでも相談に乗ってくれる家族のような存在だった。
そんな気さくで明るく、親しみやすかった国王一家の姿が最後に見られてからもうすぐ100年がたとうとしている。
今は温かい春を迎えても溶けることのない氷に覆われた城から、彼らが出てくることはない。
それでも王家の人々は今も変わらず愛され続けている。
ひと目見ればわかることだが、城と外苑が氷る中、内苑だけは様子が違った。
色とりどりの花が咲き乱れ、今も風に揺れている。
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