15年越しの乾杯

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15年越しの乾杯

「やった。クリスマスケーキ」 和樹がフォークを手に持ちはしゃいでいる。 「アンタはまだまだガキね」 中学一年の七海が一丁前に言っているものだから、笑ってしまった。 「パパまだ、帰ってこないね」 フォークの先を咥えながら和樹が言った。 「今日も少し遅くなるみたいだから、ケーキも先に食べちゃいましょう」 苺の乗った真っ白なケーキを、均等に八等分に切ろうと慎重に包丁を入れ始めた時、二人の声が重なって響く。 「雪だ」 窓を見ると確かに、黒い夜空に白いものがちらちらと舞っていた。二人は満面な笑顔。子供らしい表情に安心する。 「お母さんって昔、雪の歌歌っていたんでしょう」 和樹が突然思い出したかのように口を開く。 「和樹、それは禁句よ。パパのプロデュースなのにYouTubeで数万再生しかないやつなんだから。パパの事務所がコメント欄閉じたくらい評判も悪かったんだからね」 「えー」 「十五年経ってもネットから消えずにタトゥーされているのが本当恐ろしいわ。和樹、私たちは堅実な道を歩むのよ。パパは運が良いだけだしね」 はは、と呆れたように笑いながら、私は子供たちにケーキを取り分けた。 ホワイトクリスマスでも夫は忙しい。一方私は小さくまとまってしまった。 二十歳の私が今の私を見たら、どう思うだろう。あの頃の私は今みたいな未来を、描いたことなんてなかった。 可愛い子供二人と、人気音楽プロデューサーの優しい夫の帰りを待つホワイトクリスマス。 夫は間違いなく家族全員分のプレゼントとシャンパンを、今年も買って帰ってくる。 私は、幸せだ。
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