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8
日曜の朝は、いつだって日差しが強い。
それはひとえに起きるのが遅いせいなのだけど、今日はもはや朝とは呼べない時間であることを、窓から見える太陽が教えていた。
こんな時間までベッドに埋もれていたわりによく眠れていない身体は、ずしりと重い。頭もうまく働かないのに、現実を忘れてくれるほどに都合よくはできていなかった。
ベッドボードへ無造作に投げ捨てられたスマホを見下ろし、小さく息を吐く。生気の感じられないスマホは、昨日電源を落としたときのままだ。
衝動的に旭の唇にキスして――拒絶、されてから。どうやって旭と別れ、どうやって家に帰りついたのか、まったく覚えていない。取り返しのつかないことをしてしまったのだ、という深い後悔が全身を覆い尽くすばかりで、なにを考えようにも、思考は泥を掻くように沈んでいく。今回ばかりは、ひとりあやとりどころか毛糸を取り出す気にもならなかった。
息絶えたスマホをすり抜け、隣の小瓶へ手を伸ばす。ふたをひねると、そっと顔へ寄せた。
リラックス効果があるというやさしい香りは俺好みだ。けれど、俺を包み込むのは安らぎなどではなく、細く小さな、無数の針に降られたような痛みだった。
昨日の夜、旭からメッセージが届いた。
『ごめん』
たった一言だけのメッセージだった。
お気に入りのスタンプも絵文字もなにもなく、ただ三文字だけのメッセージ。
なんだって、大事なことは絶対にメッセージではすませないのが旭だ。そんな旭から届いた三文字は、なによりも、すべてを物語っていた。
それを確認したのを最後に、電源は一度も入れていない。
もともと俺に連絡をしてくるのなんて、旭くらいだ。旭から連絡がこない以上、電源が入っていようが落ちていようが、大した違いはない。
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