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それに、昨日撮ったおそろいの待ち受けを見るのは、どうしてもつらかった。
もっとも、旭はもう待ち受けになんてしていなくて、とっくにおそろいなんかじゃないのかもしれない――そんなふうに想像すれば、なおのこと耐えられず、かといって、自分から変えるなんてことも考えられないのだ。
罰が当たったのだろう、と思う。
自分でも気がつかぬうちに、旭の大らかさに味をしめて、調子に乗っていた。
いつか終わることは、はじめからわかっていた。あれは嘘だったのだと旭に言われれば、適当に調子を合わせて終わらせる予定だった。それまではごまかし続けて、できるだけ長く続けられればいいと、そう思っていたはずだ。そのはずだった。……それなのに。
デートの終わりにキスをして。すきだよ、と告げて。
一時の自己満足だったはずの行為は、繰り返すうち、いつしか祈りになっていた。
少しでも長く、少しでも近く、少しでも、俺と同じに。そんな独りよがりな祈りは、旭からすれば、たちの悪い呪いでしかなかっただろうに。
――あんなことして許されると思うなんて、夢見がちにもほどがある。
頭は濁った池のようにはっきりしないままなのに、昨日、最後に見た旭のつらそうな表情だけは鮮明に蘇って、太い杭で穿たれた胸が、強烈に痛んだ。
翌朝、俺はいつもより30分遅く家を出た。
学校に着くのは予鈴の鳴るぎりぎりになるだろうが、その方が都合がよかった。旭だって俺の顔なんか見たくはないだろうし、俺もまだ顔を合わせる勇気はなかった。
予鈴とほぼ同時に教室へ滑り込み、まっすぐ自分の席へ向かう。
旭はすでに席に着いていた。すぐに担任が入ってきて、ホームルームが始まる。
同じ列の一番前と一番後ろという位置関係では、席につくと同時に旭の姿は見えなくなる。進級してすぐは疎ましかったその席順に、今はほっとした。
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