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 ホームルームが終わり、1時間目の休み時間がすぎても2時間目の休み時間がすぎても、俺は旭のそばへ寄らなかった。旭も俺の席へやってくることはなかった。  登校時間をずらすくらい避けていたのだから、ありがたいことである。そのはずなのに、理屈どおりにいかない俺の心は重く沈んだ。  授業が始まり、授業が終わり。休み時間がくるたび、ひたすら机に突っ伏して、1日をやり過ごした。  授業以外で顔を上げることもないから、旭がどんな様子なのかはわからない。  俺のせいで傷ついていたら、と心配に思うのに、平気そうに誰かと笑い合っているところも見たくなくて、自分の身勝手さにめまいがした。  帰りのホームルームが終わったころには、身体の疲れとは別の種類の疲労でくたくただった。班の当番で掃除があったが、旭とは別の班だったから、むしろ気は楽だった。  掃除を終えて教室に戻ると、校舎内の人の気配はずいぶん薄くなっていた。  テスト期間も近づいていて、部活動が軒並み休みのせいだろう。快適さとは真逆の場所へ留まって勉強しようなんていう生徒はほぼいない。  旭もとっくに帰っただろう。そう思いつつも、昇降口とは逆方向へ足が向く。待ってくれているかも、なんて妄想めいた考えはなかったが、念のため、1時間ほど時間を潰してから帰ろうと思った。  ひと気のない廊下を黙々と進み、図書室のスライドドアへ手をかける。そのとき、よく耳に馴染む声がドア越しに小さく漏れ聞こえてきて、引き手に触れていた手が、するりと落ちた。  がらんとした図書室の中。まだ色の薄い夕日が射し込むカウンターのそばに、人影がふたつ見える。  こちらに背を向けているのは、美倉さんだろう。そして、顔の見える側に立っているのは、旭だった。
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