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片ひざを抱えるようにして座る俺の横で、同じ形に座りこむ。
「……昨日、メッセージ、見た?」
硬質な声が尋ねた。
「見たよ」
ごめん、とだけ届いたメッセージが脳裏に蘇り、ちくりと胸が痛む。旭は意外そうな顔をしたあと、「そっか」と小さくうなずいた。
「じゃあ、その、言うけど……オレ、おまえに、話さなきゃいけないことがあって」
「うん」
「怒ってもなじってもいいから、聞いてくれるか?」
居住まいを正すように身動いだ旭の空気が、硬さを帯びていく。俺はうなずき、また「うん」とだけ答えた。
さっきの図書室でのことを報告してくれるつもりなのだろう。俺とのことなんて自然消滅で片づけてしてしまえばいいのに、律儀に筋を通そうというのだ。旭らしいな、と胸の内でひっそりと笑う。
誠実なのだ。ちょっと考えが足りないところはあるけれど、俺とは違って、どこまでもまっすぐで。そういうところが、ずっと好きだった。
「あのな、」
「うん」
旭のいるのとは逆側に組んでいる手で、袖をぎゅっと握る。無意味だとわかっていても、ノーガードで聞く勇気はさすがになかった。隣で旭が、意を決したように息を吸い込む。
「あの日おまえに告白したの、あれ、嘘なんだ」
え?
思わず旭の方へ振り向いていた。
「ごめん、最低なのはわかってる」旭は目を合わせず、焦ったように言葉を継ぐ。
「本当に……最低な嘘だったって、自分でも思う。エイプリルフールだから、おまえを驚かせてやろうって、軽い考えで……オレ、バカだから。いや、こんなのただのいいわけだよな」
「うん、え?」
「本当ごめん! おまえがオレのこと想ってくれてるなんて、オレ、全然、考えもしなかったんだ。なのに、おまえ、あんなに……オレ、ずっと後ろめたくて……」
「ちょ、ちょっと、ちょっとストップ」
堰を切ったように捲し立てる旭を、なんとか止める。それはそうだが、そうではない。
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