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「告白。されたんじゃないの」
「や、ちょ……」
「違うの?」
「さ、れた、けど……」
「ほらみろ」
肩を掴む手に、ぐっと力がこもる。
「いっ……草介、」
「なに」
「……おまえ、怒ってる?」
「怒ってるよ」
この期に及んで、俺にそんな嘘をつくなんて。
「怒ってもなじってもいいんだろ?」
自分でも信じられないくらい冷たい声が落ちた。
旭は痛そうに顔を歪めたまま、けれど目を逸らすことはしなかった。真正面から見下ろす俺を、光のかたまりみたいな瞳で、じっと見つめ返す。
「やっぱりオレ、おまえのこと、傷つけてたよな」
ひどくつらそうに言われ、止めようもなく先走っていた糾弾の感情が、急速にしぼんでいく。
それにすら、俺はいら立った。
「卑怯だろ」
強く肩を掴んでいた手から、力が抜ける。
「そんなこと言うの、卑怯だ」
旭の肩を両手が滑り落ちていくのと一緒に、うつむけた頭が下がっていく。落ちた前髪の先が、旭の左肩へ触れた。
「……本当はわかってるんだ。俺に、こんなこと言う権利なんかないって。
昨日、一方的にあんなことして……俺が、俺の方が旭を傷つけたくせに。こんなふうに、被害者みたいな顔できる立場じゃないって……」
「傷ついてなんかない」
耳元できっぱりとした声が響いた瞬間、ぎゅっと抱きしめられていた。
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