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 身体に回った手があやすような仕草でぽんぽんと背中を撫で、上から下へやさしく動く。俺を抱きしめたまま背中をいったりきたりしていた腕が、うしろからがしがしと髪をかき混ぜた。 「オレは、草介に傷つけられたことなんてないよ」 「うそだ」 「嘘じゃない。やっぱおまえ、昨日のメッセージ見てないだろ。既読になってなかったから、最悪、ブロックされてるかもとは思ったけど」 「まさか。するわけない。それに、ちゃんと読んだよ」  忘れようもない。あのたった三文字だけのメッセージに、どれだけ打ち砕かれたか。 「そのあとだよ」 「そのあと、って……」  旭に言われ、慌ててスマホの電源を入れる。起動までの時間がいやに長く感じてやきもきしていると、旭が自分のスマホのトーク画面を開いて俺へ向けた。 『ごめん』 ――これは俺の読んだものと同じだ。そのあとに、見覚えのない投稿。 『さっきは、逃げるみたいなことして。』 『大事な話があるんだ。ちゃんと話したいから改めて時間くれ。』 『草介にはそれ聞いてから決めてほしい。』 『誕生日だったのに、嫌な思い出にしてごめんな』  5つの吹き出しの投稿時間の開きに、旭の逡巡がのぞく。俺が全部読んだであろうことを見とって、旭は恥ずかしそうにスマホをポケットに押し込んだ。 「すぐ、ちゃんと話そうと思ったんだ。けど草介、オレのこと避けてたみたいだったし。それに、いざ話そうと思ったら、なんかこわくなっちゃってさ。おまえはオレのこと、その、すき……って言ってくれてたけど、本当のこと言ったら、オレのこと、嫌いになるかもしんない、って」  向かい合って座ったまま、視線だけをうつむけて旭は言う。その頬は、朱を刷いたように染まっていた。目もわずかに潤んでいる。  俺は旭の両手とそれぞれの手を繋ぎ、そっと瞳をのぞきこんだ。
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