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「図書室のやつ。さっきも、ちょっと訊いただけなのに、あんな真っ赤になったりして」  告白されただけだ、と旭は言ったけど、好きでもない相手にされた告白で、あそこまでの反応になるだろうか。仮にも、旭が「始まってる」と感じてくれている俺相手にだって、あんな反応は見せたことがない。旭は、「あー……」と長い逡巡をみせた。 「それ、言わなきゃダメ? ……おい、そんなこわい顔すんなって」  慌てたように早口になる。いったいどんな顔をしていたのか、自分ではさっぱりわからない。けれど旭は観念した様子で――それでもしどもどしながら――話し始めた。 「だから、その……」 「うん」 「……告られて、相手いるって断ったら、さ。流れで、ちょっと恋愛相談みたいになって。それ、おまえに聞かれてたのかもって、焦った。それだけ」 「あいて?」  自分へ指さして訊ねると、ぽすっと軽く小突かれる。 「でも、なんの話であんな真っ赤に?」 「う゛……」 「ん?」 「……ほ、『本当にその人のこと、好きなんだね』……って、言われ、て……」  しおしおと語尾が弱まっていく。あまりのことに、声が出なかった。  あのときの旭の姿が、一瞬で頭の中に蘇る。  ひどく驚いたように目を見開き、首筋まで真っ赤に染めた顔をうつむけて。小さく、でもたしかにうなずいた、旭の姿が。  呆然と旭を見返していると、「黙るなよ!」と肩をぼかすか殴られた。それでもすぐには頭が回らない。殴られる勢いでぐらんぐらんと身体が揺れるに任せていたら、ふいにその拳がぴたりと止まった。
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