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旭はそんな俺を見て、満足そうに破顔した。お日さまみたいな笑顔には、くっきりとえくぼが浮かぶ。あの熱情に満ちた瞳はもう、影すら見えない。
「草介。改めて、オレと付き合ってくれる?」
迷いのない声で、旭が言う。
照れ屋だけど、割り切った途端こうなのだから、俺なんか、一生かかっても敵いっこない。
「本当、おまえかっこいいな」
「今さらだろ」
胸を反らして威張るので、ちゅっと唇にキスしてやる。旭は、ヒョッと変な声を上げた。
「……今度は嘘じゃない?」
「おまえ、そういうこというなよ。……って、オレのせいか。嘘じゃない。もうすぐ7月だぞ」
「そっか」
「返事は?」
「もちろん」
顔の前に、両手で丸を作ってみせる。そのまま指を曲げてハートの形にすると、軽く頭を小突かれた。
「……好きだよ、旭。すごく、好きだ」
祈るように嘘の中でしか伝えられなかった言葉を、精いっぱいの気持ちを込めて口にする。
旭は右の眉を上げることなく、左の口角をむずむずと動かすこともなく。ほんの少し照れくさそうな顔で、「オレも好きだよ」と笑った。
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