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カーテンとの戦いに疲れたらしい旭は、風の恩恵を捨て、カーテンを挟み込むようにして窓枠に背を預けていた。窓は開いたままだけれど、カーテンがふたをしているから、ほとんど風が入ってこない。
それでもさっきのストレスよりはマシらしく、軽快にモンスターをなぎ払っていたが、ふいに、「うげっ」と苦い声をもらした。見ようとしたわけではないが、スマホの画面が目に入ってしまった。ポップアップに表示されていたのは、村田であろうアカウントからのメッセージだ。
「合コン……」
「行かねえよ!」
小声で叫びながら、旭は通知をさっと人差し指で払う。もはや同窓会とかちんけな口実をつくることもしない、『合コンやるぞ!!!』というパッションに満ちた文面が、スッと右へ消えていった。
「だいたい、この前のだって騙されただけだし。知ってるだろ」
「知ってる。でも旭は騙されやすいから」
しれっと言うと、肘で小突かれた。
べつに疑っているわけじゃない。だけど、なんていったって旭は丸めこまれやすいし、相手の術中にはまりやすい。前の合コンだって、連絡先は取られたものの最低限で連れ出せたと思ったのに、数日も経たないうちに美倉さんと親密な雰囲気になっていたくらいなのだ。そうだ、そういえば。
「なあ、前の合コンのあと、旭、デー……出かけるのやたら断ってきたことあったけど、あれってなんだったわけ」
デート、という言葉をすんでで飲み込む。人が少ないとはいえ、聞きとがめられてもめんどくさい。旭はとくに引っかかった様子もなく、小さく首をかしげた。
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