2「叶えたい夢があるんだ」

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「もう一つの理由が、過去に育った植物が現在の地球上の環境に適応できるかまったくわからないということ。土は人工的に作ることができるだろうが、その土に自然の植物がちゃんと生えてくれるかわからない。それを研究するだけで広大な土地、莫大な費用が必要になるだろう。金銭面のハードルもさることながら、芽吹かせるのにはかなりの運と根気が必要になる。……そのせいで、天然の植物に関しては現在は一部の学者が細々と過去の文献を漁って研究しているだけになっているというわけだな」  なるほど、とレオは頷いた。  恐らく、自分のスキルがあるので二つ目のハードルはなんとかなるだろう。広大な土地が必要なのは事実だろうし土の購入費用も莫迦にはならないだろうが、種を入手して埋めさえすれば植物を実らせることは力技でなんとかなるはずだ。  よって問題は、種の入手の方だろう。地下シェルター、つまり古代文明の地下遺跡を調べるには、一体どうすればいいのか。 「地下シェルターの調査って、今も断続的に続いてるんじゃねえの?遺跡には、今の世界にはないテクノロジーやお宝がたくさん眠ってるわけだしよ」 「それはそうなんだけどな」  はあ、とルークはため息をついた。 「地下シェルターを調査できるのは、ジューサータウンに行って発掘隊養成所に入らないといけないんだ。このルハナンドシティを離れることになる。養成所に入ることができるのは十八歳から。そこで、きちんと修練を積んで認められないと調査隊メンバーには入れて貰えない。かなり狭い門だ。……まあ、養成所に入るだけならお金払えばいいんだけどな」 「なんだ、入所試験はないのか」 「人数が必要なんだよ。だって、発掘隊って危ないからバンバン人が死ぬし。教科書でやっただろ、レオ。地下シェルターの中にどんな恐ろしいトラップがあるのか」 「う」  明日からはもう少し真面目に授業を聴いておこう、と決めるレオである。特に社会の勉強は重要だ。将来に役立つ知識がたたくさん詰まっていることだろう。 「君の夢は素晴らしいよ。僕も、農業をやって待ったりスローライフっていうのを実現できるなら一緒にやらせてほしいくらいさ。でも」  ルークはぐい、と顔を近づけてきた。 「その道のりは険しいし、命の危険さえあるんだ。のんびりした生活を送って楽したいってだけなら、そこまでの試練がだいぶ割に合わないと思うぞ。……それとも君は、スローライフとやらのために命まで賭けられるのか?」  そう言われてしまうと、言葉に詰まるのは事実だった。正直、役所で“スローライフ能力を下さい”と頼んだ時は、まさかこんな世界に転生するなんて夢にも思っていなかったのだから。夢と希望に溢れた、ドラゴンなんかがいるような中世ヨーロッパ風異世界か。もしくは、もう少し現代日本に近いような世界に行くものとばかり思っていた。
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