11人が本棚に入れています
本棚に追加
「また妖怪でたの?」
「そうね、妖怪靴下なくしがそこに」
あなたを指差せば、ふにゃっと笑う。許さないぞ、今回は。洗濯に出したものがいつのまにか消えるって何。本当の妖怪じゃない。
それに、妖怪の仕業にするのは私の得意技なのに。あなたが使うのを、許した記憶はない。
「妖怪にらみつけだ〜」
「ふざけてんじゃないわよ、今は真剣に言ってるんだけど」
「はい、ごめんなさい。でも気づいたらないんだよねぇ、なんでだろう」
反省してるようには見えない。それでも、怒りを持続させるほどの気力はもうない。
「ま、いいや、新しいの買うしか無いね」
畳んだ洗濯物をクローゼットに持っていけば、雑に隠されたプレゼント。
絶対隠す気も何もないでしょ、あいつめ。
見ないフリが年々上手くなっていく。ぶつかり合ったところで良いことなどなくて、それに、気力ももうない。ただ平坦な緩やかな生活を続けていくことの方が多分幸せだから。
最初のコメントを投稿しよう!