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「カレーできたよー」
お得意のカレーをお皿に。その上にはトロトロのチーズ。唯一の得意料理は、確かに美味しい。美味しいんだけども。ううん、ありがたい。料理してくれるだけありがたいからいいの。うん。
飲み込んだ言葉は、どんどんと胸の中で降り積もって定期的に爆発する。何度めかわからない爆発しそうな想いを噛み締めて、毎回返ってくる言葉は「もうやめる?」だ。
その言葉が一番嫌い。直すでも、どちらかが譲るでもなく。やめるを選択肢として出して来るあなたが、一番大嫌い。
言ってもどうせ、そんなつもりじゃとか言うし、すぐ忘れるし。やめようやめよう。考えるのを止めないと、勝手に一人でまた変な方向に行ってしまう。
「食べないの?」
「食べるわよ」
カレーはやっぱり、とびきり美味しい。多分、人生で一番美味しいカレーは、このカレーだろう。いつのまにか、自分で作るカレーの順位を飛び越えていたな。
「なににやけてんの?」
「おいしくて、人生で一番美味しいカレーにランクインしました」
「ありがと、う?」
「こちらこそ」
ふふっとつい漏れ出た声が耳に入って、おかしくなってお腹を抱えて笑う。あんなに苛立ってたことが、一瞬でどうでも良くなっちゃった。
「急に怖いんだけど」
「ううん、なんでもないの」
「なんだよ、それ」
「いつのまにか、美味しさが染みるようになったなぁと」
「意味わかんないけど、美味しいならよかった」
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