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「ごちそうさまでした」
両手を合わせて挨拶をすれば、やけににやけた顔のあなた。
「なに?」
「デザートあるからそのまんまで」
「珍しいね」
「まぁね」
こそこそと背中に隠してるのは、箱……? ケーキでも買ってきたんだろうか。
「じゃーん」
彼が差し出したチョコレートのホールケーキの上には、十本の蝋燭と「出会ってくれてありがとう」と書かれたチョコレートプレート。
「出会ってくれてありがとう?」
「出会ってからさ、今日でちょうど十年目」
結婚記念日でも、誕生日でもなく。出会い記念日、か。意識してなかった記念日に、驚きと可笑しさが身体中に広がった。
「僕と家族になってくれてありがとう。恥ずかしいんだけど、笑わないで聞いてよ。いつも言えないけど、愛してる」
「今更な」
「僕のいろんなダメなところに苛立ってる時も気づいてるし、忘れっぽいし、約束守れないことだってある。こんな、ダメな僕を見つけて選んでくれてありがとう」
真剣な言葉とホールケーキになんだか、涙が溢れ出て止まらない。苛立つし、ぶつかり合う気力ももう持たない関係だけど、まだあなたを私は愛してるし。必要としてるのよ。
そんな事実を認めたくなくて、見ないフリをしてたけれど。
「あと、これ。これからもずっと僕と一緒に居てくれますか」
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