一一ニニ

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 気づいた真実が恥ずかしくて、甘いチョコレートケーキを口の中に入れて、また見ないフリをする。 「昔はショートケーキ一択だったのに、最近チョコレートケーキばっかりだから。こっちの方が好きになったのかと思ったんだけど」  知らないフリをしたまま、チョコレートプレートに齧り付く。 「照れてる?」 「なにが?」 「僕がチョコレートケーキが好きだから、チョコレートケーキばっかり選ぶようになってたことに気づいて」 「うるさいな」 「照れてるんだー? こう言う時くらい愛してるとか言ってくれても良いんだよ?」  調子に乗ってきた彼の口には、甘い言葉の代わりにとびきり甘い齧り掛けのチョコレートプレートを突っ込む。 ――君が好きだから怒るし、悲しむし、苛立つんだよ。  言わないけど、愛してるよ。心の底から。どんなにむかついても離れるって選択肢を選べない程度には。 <了>
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