第一章 何かが起こりそうな予感

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第一章 何かが起こりそうな予感

 梁瀬 遼(やなせ りょう)は、ベッドの中にいた。  いや、細かく言うのなら、ベッドの中に逆戻りしていた。  いつもなら、すでに出社し、就業前のコーヒーでも飲んでいる時刻だ。  だが遼は、自宅マンションのベッドの中で唸っていた。  抜かりなく整えた黒髪を、寝癖のままにして。  目鼻立ちの整った、涼やかで端正な顔を、ゆがめて。  切れ長の黒い瞳は固く閉じ、額に脂汗をにじませて。 「うぅ……、ぐぅう……。痛い……ッ!」  エビのように丸くなり、ただひたすら腰の痛みに耐えていた。 「くっそ! 何で俺が、こんな目に!」  起き抜けに、パジャマのままキッチンへ行って。  湯を沸かそうと、ケトルをひょいと持ち上げた。  いくらかの重量を予想していたが、ケトルは空でやけに軽く持ち上がったのだ。  その途端。  腰に、かつて味わったことない激痛が走った。  椎間関節症。  いわゆる、ぎっくり腰に、遼は突然に襲われたのだ。

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