恋は僕にむかない

アルバイトの浩二君

「店長ありがとうございます」

「え？...何が？」

「浩二君とシフト一緒にしてもらってることが多いから」

「ああ、そのこと。かわいい舞ちゃんのためだもん」

ほんとは２人とも積極的に入ってくれるから、たまたま一緒になることが多いということは言わないでおいた。　

「それでどうなの？うまくいってる？」

「うーん。それがですね～」

「どうしたの？」

いつも物怖じせずずけずけ言う舞ちゃんが、珍しく言いにくそうにチラチラと私を伺つているのを不思議に思いながらそう聞いた。

「なんだか浩二君、店長のこと気になってるみたいで... 」

「えっ？私？」

思いもよらない言葉に戸惑いを覚える。

「そうなんですっ。私と話しててもいつも店長のこと聞いてくるんです。何とかして下さい。」　

「何とかって言ったって。それにあの子年下だし」

「ですよね。店長なんておばさんたよって言ってるんですけど、私のことより店長のことばっかり聞いてくるからこの間つい怒っちゃって。だから今ちょっとギクシャクしてるんです」

「そうだったんだ」

「でも私あきらめませんからね。
話せば話すほど好きになっちゃって。だから店長から浩二君に興味ないって言って下さいよ」

「うーん。でも何も言われてないのに私からは言えないわ。もし勘違いだったらめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん」

「じゃあ、私から言ってもいいですか？」

「別にいいけど...。でもあからさまに言わないでよ。辞められても困るし」

「そこは任せといて下さい」

「そう？」

少し不安になりながらもそう言わざるを得なかった。