17人が本棚に入れています
本棚に追加
トキさん、夕方からのすごい風がやんで夜半から雪が降ってきました。今年の初雪です。雪の降る音は驚くほど静かで、怖いくらいです。雪が音を吸いとってるんでしょうか。もしそうなら私の悲しみも一緒に吸いとってくれればいいのにと思います。でもこんなに静かな夜は自然とトキさんのことを考えてしまいます。そしてトキさんの匂いを思いだしています。なんてあらわしたらいいのかわからないけど、やっぱりトキさんの匂いとしか言えなくて、とてもいい匂いで、とても安らぐ匂い。でも少し嗅がないと忘れちゃいそうです。だからずっと嗅いでいたいです。ずっとずっと。そして。ずっと、ずっと一緒に居たいです。
そう書いたメールを何度も読み返し、そして送れないまま消してしまった。送ったら何かが終わってしまいそうで怖かった。
この言葉たちはいったいどこにいくのだろう。きっとこの世のどこかに行き場の無い言葉だけがいける場所があるのだと思う。
もう寝ようかと目を瞑った時、トキさんからメールが届いた。
さっきまで溢れていた言葉は雪の中に吸い込まれていくように消えて、ただ画面だけを見つめていた。
リオ、雪が降ってるよ。会いたいね。
うれしくて、でもこわくて、結局うんとだけしか送り返せなかった。
少しして電話がかかってきた。
「今から会いに行っていい?」
「え?。雪ですけど...。大丈夫ですか?」
「もちろん。こんな静かな夜はリオのことばかり考えちゃって」
そう言われ胸が痛いくらい締め付けられた。
「私もです。気をつけて来て下さい」
そう言うのが精一杯だった。
私はこの気持ちにどう整理をつけたらいいのか少しもわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!