第6章「全ては浮かれていた俺の責任」

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 俺が陽を避け出して二週間が過ぎた頃だろうか。  靴箱で上履きに履き替えていると、「おい」と横から声を掛けられた。ちらっと視線を横にずらすと、視界に見えたのは八尾だった。よりによってコイツかよ。 「なに」 「おまえに話あんだけど」 「ああ、陽との惚気? キモイから聞きたくない」 「おま……ちっげーよ、クソ! いいから、どっか開いてるとこねぇのかよ」  ねぇのかよって、話したいのは八尾の方だろ。決めとけよ。それに八尾の場合は話し合いじゃなくて殴り合いだろうが。  ワザとらしくため息を吐きながら、殴り合いができそうなところを考えてみる。  確か学校から徒歩10分ほど歩いたところに草むらがあったはずだ。草むらだったらもし仮に殴られても、草がクッションになって痛さはやわらぐはず。 「じゃあ、八橋駅の近くの草むらに集合で」  殴られる前提で提案する俺に、八尾はハア? と、顔を歪めた。 「八橋駅の近くの草むら? 遠くね?」 「歩いて20分で着くだろ。チャリだったら3分、4分」  八尾は未だ不満がある顔をしていたが、しぶしぶといった感じで頷いた。
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