第7章「その余裕さに腹が立つ」

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「…………まあ」 「だから男が寄ってこねぇんだよ、てめぇは! しゃあねぇから俺もダチになってやるよ」 「……いや、一人でいい」  「人の好意を無下にすんじゃねぇ!」と怒られたけど、それはこっちのセリフだ。  せっかく陽から身を引いてやってんのに、無下にしないでほしい。そして、金輪際俺に構わないでほしい。 「もうほっとけよ……」  ゴロンと寝転がると、八尾はまた俺にテストの答案用紙を見せてきた。しつこいな。 「とりあえず、追試の再テストまで勉強付き合え!」 「…………なんで上から目線なんだよ。俺の知ったことじゃないし」 「陽には絶対に手出さねぇから」  ヤケクソになって、八尾にボロボロにされればいいと思っていた。けど、”手を出さない”と言われて分かったことが一つある。  やっぱり手を出してほしくない。触れてほしくもないし、キスも、それ以上もしてほしくない。八尾と陽がそういうことをしていると思うだけで頭がイカれそうになる。  俺の最初が陽であるように、陽の最初も俺であってほしい。まだ諦めたくない。 「……分かった。絶対、手出すなよ」
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