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しばらく時間を置いて、俺もカラオケの受付を済ませる。
どうやら優冴と大志の部屋は俺の向かいの部屋だったようで、そっと部屋を覗いてみる。大志が生物で使われる単語を熱唱しながら歌に合わせて歌っている。その光景を優冴は笑いながら見ていた。
何で生物なのかは分からないけれど、分かったことは一つあった。
――俺が知らない二人がそこにはいた。
「…………帰ろう」
部屋に入る前にお店から出る。まだ数分しか経ってない俺を不思議に思ったらしい、戸惑いながらもお会計をしてくれた。早々に家に帰り、布団へ潜った。
……俺、全然分かっていなかった。仲良くなりたいって思う気持ちを邪魔していたのは俺だったんだ。
俺の存在は大志からも優冴からも、ましてや優冴の隣でさえも許されない。
――俺なんかいない方が良い。そう思ってしまうと学校も行く気力がなくなり、スマホの充電もせずに切れっぱなしの状態で数日が過ぎてしまった。
当然、部屋から出てこない俺に母さんは、「陽! いい加減学校行きなさい」とドアを叩いて怒っている。
「今日も具合悪いから」
「具合って、熱もないじゃない!」
「もう、うるさいな。放っておいてよ」
乱暴な言葉を吐き、また布団へと潜る。
心配してくれる母さんには申し訳ないけど、まだしばらく学校へは行けそうにない。またいつも通り、何もない1日を過ごそうとしていた時、
「あらー! 優冴くん、おはよう~」
下で母さんの声がした。
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