エピローグ(古城の時計塔)

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 結婚式がすめば、シャルロッテ姫はオルレアン公の正式な妃。フランス王家の姫になる。  バイエルンに帰ることは許されない。  そんなシャルロッテ姫を見送るのだ。  城からほど遠く、人気のない場所で。  フランスへと続く街道が見下ろせる小高い丘の上に、シャルロッテ姫が乗る馬車を見送るゼットン卿が佇んでいた。  愛馬のサラサーンが、慰めるようにゼットン卿に頭をすり付ける。  馬車の中のシャルロッテ姫を想い、マントから姫からの手紙を取り出した。  【きっと貴族の娘に生まれ変わって、お前のもとに還って来る】  【この命にかけて誓う】と、プラチナブロンドの髪を入れた手紙を、侍女のテレサが人目を忍んで彼の城まで届けに来たのだ。  「姫様のお心をお受け取り下さい」  差し出された手紙に涙した。  今生で一緒になれぬ二人には、来世を願うしか道がない。  「確かに受け取ったと、お伝え願おう」  厳かに来世を誓った。  その後。  シャルロッテ姫を心から愛するゼットン卿は、姫が生まれ変わる日を待って一度も結婚をしないまま終生を独身で過ごしたという。  「姫が生まれ変わって、城に帰って来た時の為に」と、姫の為の部屋を用意したり。  「時計塔の鐘の音が、姫の眠りを妨げぬように」と、優しいオルゴールが響くからくり時計を用意したりと。  唯々、生まれ変わったシャルロッテ姫と過ごす日々を夢見て、準備したらしい。  白雪姫の人形には、シャルロッテ姫から託されたプラチナブロンドの髪を使い。姫を目覚めさせる王子様の人形の髪には自分の髪を使った。  だが命が終わる日までひたすら待ったが、ついに姫の生まれ変わりが城を訪れることは無かったのである。  ゼットン家は彼の甥が継ぎ、カラクリ時計もやがて忘れ去られて動かなくなった。  そのからくり時計に、奇跡の時が訪れたのは。ファントマ・Zとアンリ・シャルルが城の礼拝堂で、騎士とプリンセスの結婚の誓いをたてた、その夜の事だった。  小人に護られて眠るシャルロッテ姫の人形を、そっとゼットン卿が揺りおこす。優しく胸に抱きしめると。  心を込めて熱い口づけ。  シャルロッテ姫の目蓋が上がり、グリーンの瞳に喜びの輝きがまたたいた。オルゴールの小箱が開き、バイエルンの民謡が時計塔から流れ出る。  午前二時。  霧氷に覆われた白い木々の上を、ファントマとアンリの眠りを妨げぬように優しい音色が流れていく。  やがて鳴り終えると。  シャルロッテ姫を抱いたゼットン卿が、カラクリ時計の中の柔らかなベッドに姫を運び込む。  「ともに朝を迎えよう」  ゼットン卿の言葉に、姫が嬉しそうに微笑んだ。   🌹・・PSを少々!・・  ルイスとテディは、ニューヨークの新聞社を見限った。ファントマの結婚という特ダネを、古城での新婚生活の写真付きでパリのファッション誌に売り込んだのだ。(勿論、報酬が破格だったからにほかならない)  ファッション誌の編集長が狂喜乱舞。  その年の夏、パリ祭の記念特集号に掲載された記事が、大変な反響を呼び。特大の別冊が発売になったようだ。今や二人の懐には、十分な資金が出来たとかで・・念願の世界遺産をめぐる旅に出た・・と、風の噂に聞いた次第🌹!  
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