35人が本棚に入れています
本棚に追加
昨晩行われた第二回夫婦会議の末、金曜日の朝は夫を起こすミッションの幕開けだ。
ーーー…ジリリリリリリリリ
「ハッ!…ハッ⁉︎…寝坊したっ‼︎」
ホワイトハウス二階、無駄に広いその家屋の間取りは、廊下のど真ん中に配置された階段を境界に、夫婦のプライベートが保たれていた。
そして妻雪乃は、昨日同様の時間に目が覚める。
被っていた布団を勢いよく捲りながら上半身を起こし、真横の棚に置いた目覚まし時計を見て、空いた口が塞がらない。
約束の時間はもう二時間は前のこと、昨晩は珍しくドラマを観て、明日の脳内シュミレーションを繰り返した後に就寝に入った。
結局いつもと寝る時間は変わらずだったが…きっと大丈夫さ!と謎の自信を持った雪乃だったが…見事やらかしてしまった。
布団に足が引っかかりながらベッドから降りると、無防備な姿で廊下へと飛び立て政宗の寝室へと走る。
この家に住んで初の未開の地への進入。混乱していた雪乃はノックも無しに扉を開けた。
もしかしたら私が起こすまで寝てるかもしれない…それは不安よりも淡い期待の方が強い。
あわよくば…なんて考える雪乃だったが、流石に現実はそう甘くはない。
「お、はようっ…。」
「…おはよ。」
目の前には、丁度ネクタイを結び終えたらしいスーツ姿の完全武装。
「もう出るから、」
「あら、そうなのね…。」
不覚にも失敗してしまったものの、怒られる事はない。
…政宗は、はじめから期待などしていないどころか、この女を一切信用などしていないのだから。
最初のコメントを投稿しよう!