要の恋人

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「気にしないで。それより…」 つばめが話している途中でスマホが鳴る。つばめのではない。要のスマホから 鳴っている。 「ごめん、ちょっと出るね。たぶん、さっきオンラインで求人応募したから」 「おお」 要は早口でつばめに言うと廊下の方に小走りで行く。別に聞き耳を立てたいわけではないけどハキハキとした大きな声が聞こえてきた。 「あ、はい!今すぐそちらに向かいますね!いえ、こちらこそよろしくお願いします」 どうやらこれから面接に行かなくてはいけないらしい。さっきの言葉の途中でかかってきてよかった。つばめは要に「買い物に行かないか?」と言おうと思ったからだ。自分が手伝って掃除とか済ませちゃって買い物に行きたい。要の日用品だけではなく、今日の食べるための食材とか一緒に買いに行きたい。それが近所のスーパーであっても1人で行くのとは違う気がする。誰かとどこかに行きたい気持ちになったのは久しぶりだ。だからちょっぴり勇気を出して誘おうと思ったけど、 「つばめ、今から面接に来てほしいって!」 笑顔に言う要を見ると余計に言わなくて良かったと思う。
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