要の恋人

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「出しなさいよ!要を!!」 「だからいませんって」 「いたでしょ、私知ってるんだから!」 きつくつばめを睨み、人差し指を突き付ける。 「いって!!」 「!」 見事につばめの腕にその凶器のような爪が刺さった。つばめが長袖の服を着ていたら皮膚に食い込むことはなかったのかもしれない。しかしつばめは半袖のTシャツで腕が丸出しだ。なので爪が思い切って刺さり、うっすらと血が出ている。…どうりで痛いわけだ。 「あー。もう…」 舌打ちしたくなる。なんでこんなことになるんだよ。今日は休みで朝からおいしい朝食を食べれて気持ちのいいスタートだったはずなのに。 「ごめんなさい!」 あんなに迫力ある目でつばめを見ていた女の人はつばめの腕からうっすらと血が出ているのを見て明らかに動揺し、高級そうなレースが付いたハンカチをためらうことなく押し付けてきた。
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