要の恋人

28/51
前へ
/78ページ
次へ
「気持ちは答えれないけど!」と慌てて付け足すように言う。つばめはやっぱり男とお付き合いという想像ができないからだ。でも自分の存在が誰かの喜びになれていただけで嬉しいという気持ちは本物でお礼を言いたくなった。ただそれだけなのだ。純粋に心が疲れ、病んでいて感覚がおかしくなっている自覚はある。だからこの時のつばめの「嬉しい」という気持ちが世間から見て薄気味悪いものに見えているかもしれない。あかりはずっと引いてる顔をしてるし。でもこれが事実なんだ。 「つばめ…」 「それでもごめんな。俺は要の気持ちと同じ気持ちにはなれないと思う」 要は首を横に大きく振った。目には大粒の涙が溜まっていて、ポロポロと落ちていく。それを手でぬぐい、 「嬉しいと言ってくれただけでもう僕は幸せだから。大丈夫。ありがとう」 そう、零すように言ったのだ。 けどそれで事が丸く収まるわけない。 「それで、これからどうするのよ。私とまだ付き合うの?」 それはとても冷たく肌に刺さるような言葉だった。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加