要の恋人

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「えっと」 「ちゃんとはっきり私の目を見て言いなさい!」 言いたいことをまとめようとする要の思考を止めるようにも思えた。あかりは泣いていた。聞いておいて、でも欲しい言葉は一つのように思える。 「この人、あんたの気持ちに応えられないって言ったでしょ?だったら私といるしかないでしょ。私といること選んでよ!」 「…」 要は答えなかった。それが答えのような気がした。静かにまっすぐあかりをみる目にはあかりが映っているのだろう。離れないで、傍にいてよと訴えている表情がちゃんと目に入っているのに要は頷くことをしない。 「ねえってば」 「あかり」 「ずっと一緒にいてあげたじゃない。変人のあんたと。想いが報われない時もそばにいたじゃない。私がいたからあんたは今があるんでしょ。私といて良かった時だってあったでしょ」 「ごめん」 要はずっともしかしてこの関係はいけないものだと分かっていたのかもしれない。
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