要の恋人

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「中途半端に優しくしないで」 あかりは一瞬、手を払いのけたことに後悔をするような顔をしたがそれは本当に一瞬で目を吊り上げぴしゃりと言ってのけた。 「要の言う通り、別れてあげる。これはあんたに言われたからとかじゃなくて私の意志よ」 そしてソファーの上に置いていた自分のバッグを掴むと、あかりはつばめに深く頭を下げて、「突然上がりこんで騒いでごめんなさい」と言い、バッグから取り出した財布から一万円札を適当に何枚か取り出すとお詫びとしてと渡そうとしてくるのでつばめは慌てて「いらない」と言うとあかりは一旦取り出したお札たちを財布に戻した。 「お邪魔しました」 最初の勢いと迫力は帰る頃にはごっそり落ちていたけど、それでも背筋をピンとして出ていくあかりは強くて美しいと思ってしまった。 あかりは一度も手を払いのけてからは要を見なかった。要も見る資格がないと思ったのか、あかりとは反対に体を丸く抱きかかえるようにしていて玄関まで来なかった。
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