要の恋人

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「あのさ」 自分の言いたいことはある。けどうまく言葉にできなくて口をパクパクさせて結局閉ざしてしまう。そんなつばめを要は愛おしいものを見る目で「ありがとう、気を遣ってくれて」と言った。そんなんじゃないのに。 「…えっとここ出て行って住む所は」 言いたいことは他のことだが知りたいことはするりと聞けた。 「うーん、なんとかするよ」 「何とかって…」 いくら働くところが決まったって住む場所がなければ困るだろう。しかも働き始めは特に体調が肝心だ。人間だから体調は壊すことぐらいあるだろうけどそれでも自己管理がなっていない奴と最初に思われてしまうのはまずい。つばめの働く会社は新人だろうがベテランだろうが体調管理ができていないとそれはそれは煩いのだ。それを思い出しただけで胃がキリキリとして顔を歪ませたくなる。 「大丈夫だから。…それに、あかりを泣かせてしまったから。自分だけ温かい所に居座るってずるいでしょ。せめて自分で自分を罰したい」
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