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けど元カノはある日、つばめに別れを切り出したのだ。「好きな人がいるの。あなたとの未来は考えられなくて」そう一方的に言って。元カノはつばめが給料を他の社員より多く貰っていると思っていたそうだ。そう思ったきっかけはつばめの着ているスーツやコート、鞄、靴を見てだと思う。どれも老舗ブランドのものだからだ。そういうブランドは最初の出費は大きくても丁寧に作られているため丈夫だし、味が出てきて自分に馴染んでくる。量販店も悪くはないがすぐダメになるし何度も買い替える必要が出てくる。その費用と手間を考えた時、ただつばめは前者を選んでるだけだ。けど元カノはそれらをすべて買い揃えるだけの金の余裕があると思い、近寄ってきたのだ。つばめを捨てて、次に選ばれた男にわざわざ教えられた。元カノが選んだのは10歳以上年上の管理職の男だった。顔はあまり覚えていない。ただわざわざそんなことを教えてくるほどの歪んだ性格が滲み出ているような顔だった気がするし、顔は覚えていなくても腹が出ていたのと頭髪もかなり怪しかったのは鮮明に覚えている。元カノは金を愛してるだけ。それを自分のために使ってくれる男を探していただけ。ただそれだけなのだ。管理職のその男は気が付いているのか気が付いていないのか、気が済むまでつばめと自分の差を気持ちよさそうに話していた。けどつばめは傷つかず、軽く受け流していた。つばめのほうは元カノに執着するものがなかったからである。ただ、どんなに下手でも自分のために作ってれた手作り料理は食べてみたかったかも。そのくらいである。
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