要の恋人

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「泣いてはいなかったけど…」 あかりは唇をギュッとして毅然としていた。涙なんて1つも零していなかったけど…。 「あかりは人前では絶対泣かない。勿論、僕の前でもね。泣いたら負けだと思っているのか、本当に泣きたくなったときはどこかに隠れて泣くんだ。小さい時からそうだった」 小さい時から一緒にいた相手、しかも好きだった相手に別れを告げられるなんてそれまでの人生を否定されたかのように辛く思える。しかし、言うほうも辛いという感情があるはずだ。 「幸せになってほしいんだ、あかりには」 ほらやっぱり。 作られた言葉じゃない。 自分を守るための言葉でもない。 本当に相手を想う優しい声で温かい言葉であかりの幸せを願っていた。
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