要の恋人

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「俺もちゃんと生きるから」 要の作ってくれたご飯を食べたとき、生きてるって思えた。コンビニ弁当もパンも普通に美味しいのに、食べていくにつれ、体はそれを欲していないと訴え、全てを食べきれない時も度々あった。歳なのかなとか、こういう時にだけ自分の都合のいい考えを並べていたけど、そうすると物悲しい気持ちだけが残った。残した弁当に心の中で謝っていた。だから食事がいつの間にか好きじゃなくなっていたけど、あの夜は食事が楽しいと思えた。体の隅々に栄養が行き届いていくのがしっかりと分かった。特別な料理でもない。特別な材料だって使っていない。つばめのよく知る料理で誰もが手に取るような食材で作ったのになぜあんなに心が震えたんだろうね。死んだように生きていたつばめの心に息を吹き込んだのは間違いなく要だ。だからこのまま見放したくない。これっきりの関係になりたくない。 「好きなんだろ?俺のこと」 要が顔を上げ、じっとつばめを見る。つばめは要が視線を外せなくなるくらい強く見つめ返す。
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