要の恋人

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まあ、でも気持ちが分からないわけではない。つばめも20歳になりたてで初めてビールを飲んだ時は「こんなもの、飲めるか!」と思わず声を大にして言ってしまったことがあるからだ。 「俺も苦手だったよ、昔は。でも背伸びして飲んでいたらいつの間にか冷蔵庫にあるのが当たり前になってたってだけで。代わりになんか飲み物あったかな」 冷蔵庫を漁ってみると、いつ買ったか分からないオレンジジュースが見つかった。賞味期限は切れてるかもしれないけど未開封だし、気にしないなら飲んでいいよと言うと要の目がきらりと輝いた。 「僕ね、ビール単体は苦手だけどちょっと手を加えたらつばめのように飲めるんだ」 「へえ…」 「その、そうかそうかっていう弟を見守るような目で見ないでよ。僕、つばめに弟として見られたいわけじゃないし…ラブとして見てほしいし」 「…」 「胃袋、掴まれたって言ってくれて嬉しかったよ。そんな理由ってつばめは言うけど、僕はその理由で傍にいていいと言われただけで十分幸せだから」
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