君に胃袋、つかまれた

ビールとオレンジジュース

「あれ、ビールは？」
「あ、そうだった。肝心のビール！」
本当に忘れていたみたいで目をまんまるにしてパタパタと取りに戻るミーアキャット…じゃなくて要。そんな慌てなくていいのにと、のんびり思いながら見ていると要は2つのグラスに半分ほどオレンジジュースを注ぐ。
「え、そんなに注ぐの？」
「うん。研究の結果、１対１で割って飲むのがいいってことが分かったんだ。これぞ、黄金比！」
「そういうもんなんや」
隠し味程度で終わらないオレンジジュースとビールをマドラーで軽く混ぜると自信満々に「飲んで！」と突き出された。

飲む前からこの飲み物は美味しいだろうというのは分かった。２回の温かい食事だけで要の作るものは美味しいものだとつばめの舌は洗脳されている。

「いただきます」
一口飲むと、おおっと思わず声に出してしまった。初めて飲むビールだった。けどつばめの知っているビールじゃない。オレンジジュースの甘みがビールの苦みを消していてこれはビール嫌いには飲みやすい飲み物だと納得してしまう。たしかに、これは…。