ビールとオレンジジュース

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要は動かなかった。 「どうした?」 微塵も動かない要の傍に寄ると要は「わー!」と言いながら泣き出してしまった。 「ど、どうした?!」 今度は本当に慌てた。つばめがオロオロしても何も答えず、迷子になった子供のように泣きじゃくる。ええー。俺何か言ったか?自分では分からないけど要の心をえぐるようなことを言ってしまったか。 「つ、つばめともっと早くに…」 「え?」 泣きじゃくる要が言葉を零した。消えそうで聞き逃しちゃいけないような気がして耳を近づける。要はまだ両手で零れ落ちる大きな涙の粒を拭っている。つばめは手近にあった洗いたてのタオルを差し出した。要は素直に受け取り顔をタオルで覆う。 「もっと早くに会いたかった、つばめに。こんな自分でもいいと受け止めてくれるつばめに出会えて好きになって想いを告げれたら、あかりも悲しませなかったし、僕も自分を嫌いにならなくて済んだ」
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