丹羽

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 ファミレスはこんな時間でもそこそこ賑わっている。通された二人席は距離が近くて、妙に居心地が悪い。そもそも丹羽君と二人きりで話すことが珍しすぎて、いや、もしかしたら面接以来かもしれない、なので、ちょっと緊張している。俺はコミュ力というものが、あまり高くないからだ。 「あ、サンマ定食あるじゃん、オレそれにします。高良さんは限定スイーツって、栗のやつ?」 「うーん、せっかくクーポンあるからスイートポテトとモンブラン両方のやつにする」 「豪華ですね」 「普段はめったに外食しないんだから、こんなときくらいいだろ」 「あ、オレの為ですよね、ありがとうございます」  まっすぐに嬉しそうに笑う丹羽君はなんか、きらきらしている。若いからか、顔がいいからか、なんとなく直視できないで、俺はテーブルに置かれたテイクアウトメニューの表記を目で追ってしまう。注文を終えた丹羽君が、不意に声を上げて笑った。 「それ、元カノもやってました」 「それ?」 「あー、近くにあるものの文字読むの。本すげえ読む子だったから。癖なんだって」  うん、それはよくわかるけど、俺のはコミュ障が原因なのもあるぞ。だって、もう、何を話せばいいか分からなくなっている。だいたい、丹羽君と俺に共通項がみつからない。  いや大丈夫だ、今は、ちゃんと議題がある。  丹羽君にオススメの本を教えるんだった。 「その、元カノ本好きなら、なんか一緒に読んだりしたんじゃないのか?」 「あー、勧められたんですけど、難しくて無理でした。なんか教科書に載っているみたいな昔の人が書いたやつ」  いわゆる文豪ってやつだろうか。読みやすいものもあるが、ものによっては言葉遣いが難しかったりとハードルが高いから、普段読まない人間にはきつかったのかもしれない。 「丹羽君は漫画どんなの読んでいるんだっけ」 「んー、売れてるのをちょこちょこって感じですかね。バトルものが好きかな。高良さんは漫画も読むんですか?」 「話題作は一通り」
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