初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる

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   * * *  それは十年前の雨の日のこと。 「キートお前、ジュリちゃんのこと好きだろ」 「な、何を突然」 「いちおうジュリちゃんは俺の婚約者なんだけどな……まだまだ乳臭いガキだからなぁ」 「兄貴、そういう言い方はよせよ」 「ようやく義務教育を終えた高校生だぜ? こっちはもうすぐ三十路になるってのに、結婚なんて犯罪だろ」 「けど、じーちゃんの言うことは絶対だって」 「お前の存在を認めてない頑固爺だぞ。俺、この婚約やめるから」 「やめるって、どうやって……?」  高校三年生になったばかりの貴糸は義理の兄の告白を前に凍りつく。 「俺、好きな女性(ひと)がいるんだよね。いっそのこと既成事実作って周囲に認めさせちゃおうかな、って」  そしてその言葉通り、その年の夏までに既成事実を作り、年上の彼女を捕まえた紡はそのまま雲野コーポレーションの次期社長の地位を固め、経営が傾きだした婚約者の会社との取引を切り捨ててしまった。婚約破棄の言葉とともに。  貴糸は樹理の父親の会社ごと彼女を拒んだ紡のやり方に反発した。けれど高校生の自分は何もできなかった。
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