初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる

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 何も知らない顔をして傍にいつづけることはもう無理だと、いまのままではこれ以上彼女の傍にはいられないと貴糸は悟ったから、別れの言葉を口にした。 「これじゃあもう会えないな」 「――ツムグくんは優しい王子さまみたいだけど、あたしはたったひとりの特別なお姫様じゃないんだね。だけどキートはこわい顔してるけど、あたしにだけずっと優しくしてくれた……それなのに、もう会えないの?」  樹理は紡の一方的な婚約破棄よりも貴糸と逢えなくなることを残念がっているように見えた。  兄が見捨てたのに、弟がのうのうとしているわけにはいかない。紡のように、既成事実を作ればいいとも思ったが、いまそれを行うのは最低だと察した。まだだ。これから巻き返してからだ。  会社経営について学んで、兄と対等にやりあえるちからを手にいれて、財を築かないと。  そうすればきっと、樹理に手が届く。何年先になるかはわからないけれど……  社長令嬢として大切に育てられた樹理は高校生になってからも無邪気で、貴糸が(よこしま)なことを考えていることすら気づいていないふうだった。
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