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スーツを脱がされながら樹理は考える。はじめてのキスの相手は誰だっけ。唇にちょこんとキスしてきたのは。
紡は婚約者の樹理をお姫様扱いしてくれた。それこそおとぎ話に出てくる王子さまのように、手の甲へたびたびキスしてくれた。
そのことを言おうとしただけなのに、貴糸は『兄貴ともキスしただろう?』って怒りだして、樹理の唇を容易く奪う。
莫迦だなあ、はじめてはキートだけだよ。
そう言いたくても、彼は樹理の身体を愛撫するので精一杯。
「ひゃっ」
「んだよ。スーツのしたにこんな可愛い下着つけやがって。他に男でもいるのか?」
「いるわけないじゃない! 仕事の日はいつだって勝負下着つけてるだけ」
「ふーん。毎日が勝負服、か。なんかいいな、それ」
「あっ」
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