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ドアが閉まると、途端に部屋は静かになった。
無意識のうちに大きなため息を一つ吐く。
豪華すぎる家具に囲まれて、ポツンと一人。
キラキラの夜景を眺めていると、世間はクリスマス・イヴなんだ…なんて、改めて思い出して、なんとなく取り残されたような気持ちになる――――…。
視線を落とすと、花束に挟まれたメッセージカードが目に入った。指先で掬って開けば、
“Dear Mari,
I love you.”
とだけ小さな文字で印刷されていた。
こんなことで、胸がじーんとなって苦しくなって視界まで滲んでくるんだから、好きどころじゃなくて、蒼なしじゃいられないところまできちゃってるのかもしれない…。
スン…と鼻をすすった時、呼び鈴が鳴った。
莉乃が忘れ物したのかな?
のぞき穴を覗くと、そこに立っていたのは莉乃ではなく…………、
「え………、なんで?」
急いでドアを開ければ、そこにはいつもの見慣れた格好の、着崩したスーツ姿の――――――…
『メリークリスマス、麻里ちゃん』
「………蒼、……なんで?」
―――――蒼がいた。
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