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「馬鹿じゃない…。こんなの、忘れたくても忘れられるわけないじゃない…」
『麻里ちゃん、泣きすぎなのよ…』
うん、そうだよ。もう全然止まらない。
きっともうメイクもぐちゃぐちゃ。目だって腫れてしまいそう…。
「蒼っていっつもそう。馬鹿だから、何言い出すか分からないの…。ね、本気なんだよね?」
『当たり前だろ。この部屋見ろって』
「…………う、うん。ものすっごいけど…」
『気合いの表れ。分かりやすくね?』
蒼は困ったように笑って、泣きじゃくる私を抱きしめると……、
『あーーーー…よかった…。半端なく緊張した……』
心の底から…というように、大きく息を吐いた。
その言葉が意外すぎて耳を疑う。
「………は、緊張?どこが?余裕な顔してたくせに」
「余裕なんかねーよ。内心、めちゃくちゃ怖いわ。振られたらどうしよう、そればっかだわ…。だから、雰囲気も条件もすべて整えて、断る隙を与えない作戦でいこうとしたのに、出張とかマジないし…』
クリスマスに出張とかウザすぎだろ。休みなんだわ。考えろよ!…と、蒼の口からは聞いたことがないようなことを言い始めるから、意外と普通の感覚もあったのか…と、驚いた。
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