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「蒼でもそんなこと思うんだ?」
『思うだろ。人生かかってんだよ』
「ふふっ…」
『笑うとこ?』
「色々と意外なんだもん。それに、そんなに気負わなくても、寿退社が私の夢なんだから、断るわけないでしょ」
『わっかんねーじゃん、麻里だもん』
なにそれ?どこかで聞いたような台詞…。
そんなことで、夫婦になるんだ…なんて実感してしまった私も大概なのかもしれないけれど…。
「これ…、前々から準備してたの?」
『ああ、密かにな』
「いつから?」
『さぁ…、半年くらい前からかな』
「……そんなに前から?」
『カッコいいだろ。惚れ直しちゃった〜?』
揶揄うように笑う仕草が確かにかっこいいけど、イライラする…。間違えた。イライラするけど、かっこいい。同じか。
と。蒼の指先で摘まれ、キラリと輝く指輪が目の前に差し出された―――――…
『麻里ちゃん。泣き止んだなら、つけてよ。絶対似合う。自信ある』
「え、これ、ダイヤモンド大きすぎない?大丈夫?」
『なめんな。余裕だわ』
「同期でしょ?」
『うちの会社、営業のインセンティブが桁違いなの知ってる?』
だから、ここに就職したの。一番の目的は麻里に出逢うことだけどね♡…なんていい加減なことを言いながら、私の薬指にそっとそれを通してくれる。
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