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嵌っていく感触に震えるほどキュンキュンする。
『いいね、予想以上に似合ってる。俺、なかなか稼ぐよ?麻里ちゃん一人くらい養ってあげる。だから、毎日、一緒にお風呂に入ろうね♡』
「いや、入らないし」
入ったことないじゃない。
どさくさに紛れて何言い出すのよ…。
あーあ…、やっぱり蒼だった。
キュンとして損した。いつもだけど。
しかも、ムードぶち壊しはそれだけにとどまらず……、
『それでは、奥様。恐れ入りますが、こちらにお名前をご記入ください』
こんなタイミングで胸ポケットから出てきた婚姻届とペン。
おいこら、仕事の延長か。安っぽい営業だな。
こんなに素敵な部屋で、クリスマスツリーまであって、こんなにも夢のような夜なのに…、もはやロマンチックさの欠片もない。
全部消えてなくなったんですけど??
「え?今、書くの?」
『そ。もう逃げられないから、覚悟決めて?』
「いや、言い方よ…」
あのね、婚姻届って、こんな風に書くものじゃないんだってば。
しかも隣の枠にはすでに自分の名前を書き終えているんだから、本当にこの男はそつがないよね…と思うわけで。
「そういえばさ、蒼…」
『…ん、何?』
「会社で惚気てるって本当?」
『ああ、麻里狙いの奴らに牽制しとかなきゃ、だろ?』
「やっぱそんな理由なんだ。ほんと抜かりがないよね…」
『当然。てか、俺のことが心配なら、麻里ちゃんもやってみる?かなり効果あるよ?』
「いや、しないけど…!!」
『照れちゃって、かーわいい♡』
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