余計なお世話

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 セシリアは暇かもしれないが、エベルレイは暇ではない。騎士団特殊部隊の事務官はエベルレイただ一人。だから、王宮勤めのセシリアとは事情が違う。王宮勤めの事務官はたくさんいるのだ。 「あら、冷たいわね」  そんなエベルレイの態度を気にも留めず、セシリアは持ってきた小さなかばんからファイルを取り出す。 「これを届けに来たのよ。今から半年分のお金の書類」 「……あぁ」  セシリアからファイルを受け取り、エベルレイは「もうそんな時期なのか」と思った。……正直なところ、アリクの登場が予想外すぎてここまで頭が回らなかったともいう。 「特殊部隊に当てられる費用はそんなものよ」 「……前回から少し下がっているわね」 「まぁ、ほかの部隊にお金がかかってしまうから」  セシリアは肩をすくめながらそう言う。  最近王国の治安が悪いという話は聞いている。だから、別の部隊にお金を注ぐのはおかしなことではない。 「わかったわ。ありがとう。……これで、やりくりするわ」 「えぇ、よろしく」  それだけを言って、セシリアはお茶を飲み干して立ち上がる。  そんな彼女を見つめつつ、エベルレイはカップの片づけに移ることにした。 「……あのね」  しかし、エベルレイのことを引き止める声が聞こえる。その声はほかでもないセシリアのものであり、彼女に視線を向ければ彼女は少し困ったような表情を浮かべていた。 「エベルレイは、男性が嫌いかもしれないわ」 「……なによ、いきなり」 「でも、世の中の男性にはまともな人だって多いのよ」  いきなり彼女は何を言い出すのだろうか。  そう思ってエベルレイがきょとんとすれば、彼女は「……だから、アリク・ウォルジーのことも真剣に考えたらどうかしら?」と言ってくる。……余計なお世話だ。 「余計なお世話よ。……私は私の道を行く。そこに男性なんて必要ないわ」  セシリアの言葉を一蹴し、エベルレイは彼女に背を向けた。  それは、この話はここで終わりだという意味を含んでいる。  それに気がついたらしく、セシリアは「本当、余計なお世話だったわね」というと事務室を出て行った。
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